倒産と労働債権
( 「倒産と労働債権について」講演)
未払いの賃金や退職金を労働債権といいます。勤めていた企業が倒産すれば,他の債権者と同じ様に,労働者も,企業または管財人に支払いを請求しなければなりません。
労働債権の保護は,次のようになっています。
○会社更生手続では,賃金の一部は納期の来ていない税金と同様に最優先で支払われ,抵当権のついた債権より優先されます。
○民事再生手続では,未払いの賃金は抵当権の付いた債権に次ぐ扱いを受け,税金と同じ優先権が認められます。
○破産手続では,まず抵当権の付いた債権が回収され,それ以外は企業の資産を清算し,そこから管財人の報酬,破産手続開始時点で納期限から1年を経過していない未払いの税金,社会保険,労働保険が支払われます。労働債権のうち,破産手続開始前3カ月間に生じた未払給料,退職手当については原則として退職前3カ月間の給料総額に相当する額についても,これら同様に破産手続開始後破産管財人から配当手続によらずに弁済を受けることができます。破産法改正により,2005年1月から,上記のようになりました。
○任意整理では民法や商法,国税徴収法などで定めた優先度合いを踏まえることが多いでしょうが,この場合も労働債権は抵当権付きの債権や税金より低い順位です。
どんな手続でも,労働債権は担保のない一般債権より優先されます。2003年6月の民法・商法改正までは,個人商店などでは,優先されるのは直近の6か月分に限られていましたが,この改正により,会社同様に優先の範囲に限定がなくなりました。
しかし,破産するような企業では,経営状態が悪く,資産も少ないため,労働債権が支払われないことが多くあります。そのような場合に,未払い賃金の一部を企業に代わって支払うのが,労働福祉事業団による立替払い制度です。
破産や会社更生法による倒産だけでなく,労働基準監督署長が企業再開の見込みがないと判断すれば任意整理でも対象です。
労災保険を一年以上払ってきた会社で働いていたことなどが条件です。
一定期間に未払いだった賃金(残業代は含む,ボーナスは含まず)と退職金とのうち八割を事業団が立替払いします。支払には上限があります。45歳以上では最高で296万円まで受け取るこどができます。立替払いを受けるには,未払い賃金額を管財人などが証明した書類等を労働福祉事業団に提出します。詳しくは,窓口の労働基準監督署で相談下さい。
順位
|
任意整理
|
破産
|
会社更生
|
民事再生
|
1
|
法定納期以前に設定した抵当権付債権 |
抵当権付債権 |
手続開始6ヶ月前の賃金・納期の来ていない税金・管財人の報酬など |
抵当権付債権 |
2 |
税金 |
管財人報酬・破産手続開始前1年内の税金・同3カ月間の未払給料など |
抵当権付債権 |
賃金・税金 |
3 |
法定納期後に設定した抵当権付債権 |
上記以外の税金・賃金 |
上記以外の賃金・税金 |
管財人報酬など |
4 |
賃金 |
一般債権 |
一般債権 |
一般債権 |
5 |
一般債権 |
|
|
|
|