枚方法律事務所

<トップページ>
 English
 サイトマップ
 更新履歴
<弁護士の費用>
 費用についての説明
 報酬早見表
< 法 律 相 談 >
 相談をご希望の方へ
 取扱業務一覧
 内容証明郵便
 支払督促
 少額訴訟
 破産・個人再生など
<民事・家事一般>
 民事裁判と刑事裁判
 民事裁判の流れ
 交通事故
 保証人
 離婚  夫婦の財産
 成年後見
 相続    遺言
<労働事件など>
 労働法入門 PDF
派遣労働と女性の権利
 労働者派遣法について
  '12労働契約法改正
 '12派遣法改正
’03労基法派遣法改正
 パート・アルバイト・
 契約社員の労働条件
 成果主義賃金 
 倒産と労働債権
<事務所への道順>
 アクセスMAP
<お問い合わせ>
 Mail to
< リ ン ク集 >
 リンク集


パート・アルバイト・契約社員の労働条件

 
2002/10/2 関西ユニオン交流会主催「働く人の労働講座」講演レジュメ
弁護士  永嶋里枝
 
T はじめに
 * パートタイマーに代表される非正規労働者の激増
2002/8 公表 総務省労働力特別調査 
パート・アルバイト・契約社員・派遣社員等の非正規職員・従業員は1407万人(雇用者全体の約28.5%) 
男性の14.2% 女性の48.2%(全年齢平均)
1999/2 厚生労働省「職場における労働者の活用実態に関する調査・個人」
パートの72.6%に契約期間の定めあり
厚生労働省「平成12年賃金構造基本統計調査」
パートの平均賃金 女性889円,男性1026円
正社員の時給換算賃金 平均1810円 
           女性1329円,男性2004円
 * 背景
1995 日経連「新時代の『日本的経営』」発表
一部の中核社員以外は有期契約化
高度専門能力活用型グループは2・3年から5年程度の雇用契約
1998年 労基法改定
有期雇用の契約期間の上限 原則1年から例外として3年 
対象は代替化のおそれの少ない高度専門的業務に限定
2002/5 小泉首相 厚生労働省に対し指示
終身雇用を前提とする雇用制度の見直し,有期雇用拡大
2002/7 内閣府総合規制改革会議「経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革」中間とりまとめ公表
有期雇用の契約期間3年から5年に延長,適用される専門職の範囲拡大
景気の急速な悪化
 ※ 非正規労働者は景気変動の調節弁から労働コスト削減のための正規労働の代替労働へ
★ パートタイマー・アルバイト・契約社員などの正社員以外の呼称で呼ばれる社員(非正規労働者)には,給料は安い,不安定雇用でいつでも解雇される,有給休暇や社会保険はない,というイメージがある。
  そのことによって,非正規労働者は本来有している権利の主張を抑えられている。
★ さらに問題なのは,非正規労働者という雇い方をされているだけで,正社員と同じ労働時間,同じ労働実態というケースが多いにもかかわらず,正社員でないというだけで権利の主張を抑えられていること(擬似パートタイマー問題)。
☆ 非正規労働者の権利を学んでください。しかし,1人で権利の主張をすることは実際問題としてなかなか困難です。公的な制度があります。
 労働組合に加入して闘えば,さらに有効です。
 
U 非正規労働者とは
 正規労働者             期限の定めなし
 企業内非正規労働者
   ○パートタイマー
      疑似パートタイマー      期限の定めなし  期限の定めあり
      ・パートタイマー        期限の定めなし  期限の定めあり
    ○アルバイト                    期限の定めあり
    ○契約社員                   期限の定めあり
    ○臨時社員                   期限の定めあり
    ○嘱託社員                   期限の定めあり
 企業外非正規労働者(非典型的,非標準的,変則的雇用)
    ○派遣社員
      常用雇用型
      登録型
    ○出向者
    ○社外工(下請企業労働者 違法派遣)
    ○自営業(労働者でありながら雇用契約なし)
      偽装雇用(業務委託契約)
         委託販売員・外交員 / 傭車運転手 / 建設業の現場作業員
      従属的事業者(偽装雇用とは言えないが,就労形態は被用者と同様経済的には完全に従属的な自営業者)
         芸能関係スタッフ / テレワーク / コンビニエンスストア店長
 
・労働基準法(最低の労働条件を定める法律)は,労働者を「職業の種類を問わず,事業または事務所に使用される者で,賃金を支払われる者」と定めている。正社員やパートタイマーという区別はしていない。
従って,パートタイマーにも,労働基準法はもちろん,労働安全衛生法,最低賃金法,男女雇用機会均等法,育児休業法,労働組合法等は全て適用され,各種社会保険法も原則として適用される
・パート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)では,1週間の所定労働時間が,同一の事業所に雇用される通常の労働者に比べて短い労働者(第2条)と規定している。パート労働法の定義にあてはまる人は,アルバイト・契約社員・嘱託・臨時社員などといった呼称の如何にかかわらず,すべてパートタイマーである
擬似パートタイマーは,正社員と同等の処遇をするように努めるべき。
・パートタイマーという名目で,実際には正社員と同じかほぼ同じ(1割か2割程度少ないだけ)時間,同じ労働をこなしている擬似パートタイマーは,正社員と対等の労働条件を要求すること。
★ 非正規労働者であるというだけで差別がまかりとおるという問題
★ 非正規労働者の劣悪な労働条件は有期雇用契約によって支えられている
  有期雇用労働者としての問題
★ そもそも労働者扱いされないことの問題
 
V パートタイマーの権利
1 団結権,団交権,争議権
・正社員と同様に保障される。
2 雇入通知書
・事業主はパートタイマー等を雇い入れたときは,速やかに雇入通知書(または労働契約書や就業規則)を交付し,契約期間,就業場所,業務内容,始業終業時刻,休日・休暇,賃金,退職等について明示しなければならない(パート労働法6条,労基法15条)。
・労働契約の期間は,a. 期間の定めのないもの b. 一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの c.1年以内の期間を定めるもの d. 例外的に専門的職種については3年以内(労働基準法14条)
・労働契約の更新により1年を超えて引き続き使用するに至ったパートタイマーについて,引き続き労働契約の期間を定める場合には,1年を超えない範囲でできるだけ長くするよう努めること(パート労働指針)。
3 就業規則
・雇用形態に関係なく,常にその職場で働いている労働者が10人以上いる職場には,就業規則を作って労働基準監督署に届け出なければならない(労働基準法89条,90条)。
(1) 正社員の就業規則はあるが,パートタイマーの就業規則がない場合。正社員の就業規則に,パートタイマーには適用しないと書いてあっても,パートタイマーの就業規則がない場合。
  →パートタイマーにも基本的に正社員の就業規則が適用される。
(2) パートタイマーの就業規則を作る場合。
  →労働条件の水準は正社員と同じでなければならない。
  パートタイマーに適用される就業規則の作成又は変更をするとき
  →パートタイマーの過半数を代表する者の意見を聞くよう努めなければならない(パート労働法7条)。
4 待遇
・就業の実態,正社員との均衡等を考慮して,適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施,福利厚生の充実その他の雇用管理の改善を図るよう努めなければならない(パート労働法3条)。
・擬似パートタイマーについては,処遇又は労働条件等について正規従業員と比べて格差があるものについては,格差を解消し,正社員としてふさわしい処遇をするように努めること(パート労働指針)。
・厚生労働省のパートタイム労働研究会の指針案
 (働きに応じた公正な処遇のための6つのルール)
〈雇用管理における透明性・納得性の向上〉
(1) パート社員の処遇について常用フルタイム社員(正社員)との違いやその理由について十分に説明
(2) 処遇の決定プロセスに,パートの意思が反映されるよう工夫
(3) パートについても仕事の内容・役割の変化や能力の向上に伴って,処遇を向上させる仕組みを
〈雇用管理区分間の行き来を可能にすること〉
(4) パートの意欲,能力,適性などに応じて,常用フルタイム社員あるいは短時間正社員への転換の道を開く
〈雇用管理における公正なルールの確保〉
(5) フルタイムかパートかの違いだけで,現在の仕事や責任が同じであり,異動の幅や頻度などで判断されるキャリア管理実態の違いが明らかでない場合は,処遇決定方式を合わせる
(6) 処遇決定方式が異なる合理性がある場合でも,現在の仕事や責任が同じであれば,処遇水準の均衡に配慮
・1998 最高裁労働事件裁判官協議会見解
 テーマ 正社員と臨時労働者,嘱託など異なる採用区分で,勤務年数や労働内容に差がなくても賃金や昇格で異なる扱いが許されるか
 結論 実定法上,同一労働同一賃金を定めた法律は見あたらず,公序に反しない限り有効
  採用時の基準や仕事への要求水準などが異なり,賃金に差を設けても,公序良俗違反とはならない
  ただし,@勤務年数,労働内容,労働時間等について差がなく,採用時の基準や提供すべき労務に対する要求水準,使用者側からの継続雇用の期待度等においても差異がないといった極めて例外的な場合,A極端な賃金格差が長年にわたって放置されてきた結果,使用者が雇用区分を存置することについての合理性がもはや失われたとみられるときは,正義の観念に反し,公序良俗違反となる。
5 賃金
・1996/3/15 長野地裁上田支部判決 丸子警報機事件 
 擬似パートタイマーのケースで,パートタイマーに正社員となる道を用意したり,正社員に準じた賃金体系を設けることもせず,2ヶ月ごとの雇用期間の更新を形式的に繰り返すことにより,正社員との顕著な賃金格差を維持拡大しつつ長期間の雇用を継続したことは,均等待遇の理念に違反し,同じ勤続年数の正社員の賃金の8割を下回る場合は違法
・1999/11/29 東京高裁 和解
 a.給与を日給制から月給制にする b.今後5年間で毎月5000円づつ月給を増額 c.一時金の支給月数を正社員と同じにするd.和解成立後の金属に対する退職金の計算方法を正社員と同一にし,和解成立時までの勤続に対する退職金は従前の2.5倍に改める。
→5年後には正社員の90%前後まで改善される。
6 残業手当
・パートタイム労働は,本来残業にはなじまないので,できるだけ残業させないように努めなければならない(パート労働指針)。
 例外的に残業させることがある場合には,雇い入れの際,その旨を明示する必要があることはもちろん,その都度,本人の同意を得るようにすることが望ましい。
・残業が1日8時間週40時間を超える場合は,36協定の締結と割増賃金の支払いが必要(労働基準法36条)
7 年次有給休暇
・雇入れ日から6ヶ月間継続勤務し,所定労働日数の8割以上出勤すれば,パートタイマーにも労働基準法で定める有給休暇の権利(年休権)が発生(労基法39条3項,パート労働指針)。年休権の成立には,「勤続勤務」と「所定労働日数の8割以上出勤」の二つの要件。「勤続勤務」については,実質で判断される。期間の定めのある労働契約の場合でも,契約更新により6ヶ月間継続勤務すれば上記の要件により与えられる。「所定労働日数の8割以上出勤」の算定は,当初6ヶ月,それ以降1年が単位である。
・付与日数は勤続年数に応じて増加するが,パートタイマーの場合は勤務形態によって比例的に,週又は年間の所定労働日数に応じて定められている。
・対象となるのは,@週所定労働日数が4日以下の労働者,A1年間所定労働日数が216日以下の労働者 これ以上の場合については,通常の労働者と同じ日数の年次有給休暇が付与される。
8 女性保護
・正社員と同様に保障される。
9 育児・介護休業制度
・事業主は,育児・介護休業に関する制度その他の必要な措置を,パートタイマーについても講ずる必要がある(パート労働指針)。
10 退職
(1) 期間の定めのない労働契約の場合
 使用者の同意がなくても,労働者が退職の意思表示をして2週間経過すれば雇用関係は自動的に終了する。
(2) 期間の定めのある労働契約の場合
 原則として,使用者の同意がなければ,契約期間終了までは退職できないが,労働条件が雇入れ時に明示されたものと違う場合や(労基法15条2項),やむを得ない事情がある時には(民法628条)例外的に認められる。これらの事情がない場合は,使用者に生じた損害につき,賠償請求される可能性がある。同様に,使用者側が正当な理由もないのに途中解雇すれば,残期間の賃金について損害賠償請求が可能。
(3) 使用者に,各種事項(使用期間,業務の種類、地位,賃金,退職)について証明書の発行を請求できる(労基法22条)。
(4) 使用者に,7日以内に賃金を支払うこと,積立金・貯蓄金などの労働者の権利に属する金品の返還を請求できる(労基法23条)。
(5) 就業規則などに定めがあれば,退職金を請求できる。
(6) 離職証明書(雇用保険の失業給付受給に必要)を発行を請求できる。
11 解雇
・パートタイマーだからといって,正当な理由もないのに安易に解雇することはできない。
・期間の定めのないパートタイマーを解雇するときは,正社員と同様,少なくとも30日前までに解雇予告をするか,これをしない場合は30日分以上の平均賃金を支払わなければならない(労基法20条,パート労働指針)。
12 雇止め
(1) 原則
 雇用期間の定めがあるときは,契約期間内は,原則として解雇することはできない。有期契約の期間が満了すれば雇用関係は当然,終了する。使用者には契約を更新する義務はない。
(2) 労働省「パート労働指針」
 期間の定めがあっても,1年以上雇用したときは,期間満了後更新を行わない場合,少なくとも30日前までに解雇予告をするよう,努めること
(3) 労働省「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する指針」(2000/12/28)
   [1]有期労働契約
     名称の如何を問わず,期間を定めて締結されている労働契約が対象
  [2]使用者が考慮すべき事項
  @ 更新・雇止めに関する説明義務
  A 契約期間
    1年を超えて引き続き使用するに至った場合,不必要に短くしない。労働者の希望に応じ,できるだけ長くする
  B 雇止めの予告
    1年を超えて引き続き労働者を使用するに至った場合,更新しないときは,少なくとも30日前に予告
  C 雇止めの理由の告知
   1年を超えて引き続き労働者を使用するに至った場合,更新しないときは,労働者が望んだ場合には更新しない理由を告知
(4) 判例
 契約に期間の定めがあっても,雇止めを無効とするケースがある。
 理由 (1) 実質的に期間の定めのない契約と異ならない
    (2) 有期雇用であるが反復更新により雇用継続の期待権が生じる
    (3) 有期雇用であるが,継続する特約がある
    →@ 解雇法理を類推適用 
     A 信義則上の要請 
     B 更新拒絶権の濫用
・東芝柳町工場事件最高裁判決(1974/7/22)
基幹臨時工として雇われ,2ヶ月の契約期間が5回ないし23回更新
当事者双方とも,当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったもの,期間の定めのない契約と実質的に変わらない状態,雇止めの意思表示は実質において解雇の意思表示,信義則上も許されない
→解雇法理類推適用
・平安閣事件最高裁判決(1987/10/16)
パートとして採用され,1年契約を12回,8回,更新。実質においては期間の定めは一応のもので,当然更新されるべきとの前提。雇止めの意思表示・特段の事情が必要 
→主張立証がないので契約は存続
・龍神タクシー事件大阪高裁判決(1991/1/16)
臨時雇運転手として1年契約で採用されたが,使用者は契約満了時に解雇予告手当を支払い,解雇の意思表示 雇用契約の実態に関する諸般の事情に照らせば,その雇用期間についての実質は期間の定めのない雇用契約に類似,契約期間満了後も雇用継続を期待することに合理性を肯認できる。
→更新拒絶に特段の事情がないので,信義則に反し許されない。
・情報技術開発事件大阪地裁判決(1996/1/29) 
育児と仕事を両立するため正社員から有期パートに変わった経過に照らせば雇い止めには「正社員の解雇に準ずる」やむをえない特段の事情が必要
→雇い止め無効
・紀伊高原事件大阪地裁判決(1996/6/20) 
 ゴルフ場専属ゴルファーの雇い止めについて,正社員から有期契約に切り換えた後の更新手続きがされておらず,黙示の更新(民法629条2項)により期間の定めのない契約となった。
→解雇無効
・葉山国際カンツリー倶楽部事件横浜地裁判決(1997/6/27) 
パートキャディーの雇い止め 無期から有期に契約変更する際も地位が不利益不安定になることは予定されなかった。更新は1回だが,実質的に期間の定めのない状態 「解雇が許される場合と同等の事由の存在が必要」
→雇い止め無効
・丸子警報器雇い止め事件東京高裁判決(1999/3/31) 
臨時社員として採用され,2ヶ月の期間を,112回,94回更新
雇用が長期間に及んでいる場合には,労働者の側に継続雇用への期待が生じる。その期待は,期間の定めのない雇用契約におけると同様
使用者側の一方的都合で雇止めをすることは,権利の濫用の法理ないし信義則により規制されるので,整理解雇の4要件に準じる検討必要
→経営上の必要性が認められず,十分な回避措置,労使間の事前協議を経ていないので,雇い止めは権利の濫用にあたり,無効 
・ヘルスケアセンター事件横浜地裁判決(1999/9/30)
有期の薬剤師が契約期間を1年から6ヶ月,3ヶ月と次第に短縮され,ついに打ち切られたが,期間終了ごとに当然更新を重ねて期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態 
→正社員と有期契約者では自ずから合理的な差異があるとしても,経営悪化を理由に,今直ちに人員削減の必要性があるとは言えず,雇い止め無効
・エールフランス事件大阪地裁仮処分決定(2000/5/9)
航空会社の契約社員が労働条件の明確化を求めて疎まれ,2度目の更新時に雇い止め上司が「正社員になってもらいたい」と発言したことは,更新に対する期待をもたらすもので,更新を予定した契約であるから,更新拒絶には合理的理由が必要。業務量の減少はそれほどではない。
→雇い止め無効
・瀧澤学館事件盛岡地裁判決(2001/2/2)
1年の契約期限は試用期間,解約権行使は社会的相当性がなく無効
・東京国際学園東京地裁判決(2001/3/15)
専修学校の英語教員の雇止めについて,有期契約ではあるが,使用者の発言・試用期間の存在・雇用期間の長さ・職務内容等々から,労働者の長期雇用への期待に合理性あり,解雇法理類推適用,整理解雇の4要件全ての充足が必要 
→有期契約者や非正社員というだけで正社員より簡単に優先して雇用調整できるものではないので,雇い止め無効
・三精輸送機事件京都地裁福知山支部判決(2001/5/13)
常用と呼ばれる身分で1年ごとに請負協定書を更新し工場で働いた原告は,労働者,実質において期間の定めのない契約に類似し,契約継続の期待に合理性あり
→雇い止め無効
・カンタス航空事件東京高裁判決(2001/6/27)
外国航空会社の客室乗務員に対し,人事担当者が「(5年後の雇用継続について)心配しないでいい。」「5年間の契約を何度も更新する」等期待を持たせる言動をして契約社員を採用,職務が専門性を有し臨時色が薄い,解雇の法理が類推適用される。
→雇い止め時点での会社の経営状況に照らして,雇い止めを信義則上許す特段の事情もないので,雇い止め無効(逆転判決)
13 労災保険
・パートタイマーにも労災保険が適用になる。原則として,労働者を一人でも雇用している事業所は,必ず労災保険に加入しなければならず,保険料は全額事業主負担である。
14 雇用保険
(1) パートタイマーも雇用保険の適用対象。原則として,労働者を一人でも雇用している事業所には,雇用保険加入義務がある。保険料は労使それぞれが負担する。
(2) パートタイマー(短時間被保険者)の加入要件
 [1] 1週の所定労働時間が20時間以上であること。(30時間以上であれば一般被保険者に該当)
 [2] 1年以上継続して雇用されることが見込まれること。(雇用期間を定めた労働契約でも繰り返し更新されることが見込まれる場合を含む。)
 [3] 年収が90万円以上あることが見込まれること。
(3) パートタイマー(短時間被保険者)の基本手当受給資格要件
 [1] 離職の日以前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が12ヶ月以上あること。
 [2] 再就職の意思と働ける状態にあること。
 [3] 住所地を管轄する公共職業安定所に求人の申込みをすること。
15 健康保険,厚生年金保険
・原則として,パートタイマーの年収が130万円以上(60歳以上又は障害者の場合は,180万円以上)ある場合は,サラリーマンの夫などの健康保険,厚生年金保険の被扶養者に認定されず,自分で国民健康保険や国民年金に加入すべき。所定労働時間が正社員の4分の3以上など,一定の条件を満たすパートタイマーには,健康保険・厚生年金保険が適用される。
16 健康診断
・パートタイマーについても,事業主は労働安全衛生法の定めるところにより健康診断を行うことが必要(パート労働指針)。
17 福利厚生施設
・事業主は,パートタイマーにも正社員と同様,給食,医療,教養,文化,体育,レクリエーション等の施設を利用させる努力義務がある(パート労働指針)。
 
W 実践的対処法
1 労働条件がハッキリしないとき
→使用者には労働者に対し文書で労働条件を明示する義務がある。口頭だけで労働条件を告げられ,内容が不明確な場合は,事業主に確認して賃金,雇用期間,勤務場所,始・終業時刻,残業・休日出勤,休暇,退職等について文書に明示してもらうこと。(パート労働法6条,労基法15条)
2 何度も有期契約を自動更新しているのに,突然,雇止めになったとき
→このような場合は,安易に雇止め・更新拒絶は認められず,解雇と同様に見なされ,雇止め・更新拒絶には,特段の事情や合理的で社会的に相当な理由が必要となる。行政機関や労働組合等に相談すること。
3 契約以外の残業や休日出勤を命じられたとき
→本来,パート労働という働き方は,勤務時間が一般の従業員より短い点に特徴があり,短時間かつ都合のよい一定の就業時間帯を前提として勤務することが多い。残業や休日出勤はないのが原則。パート労働指針でも,事業主に対して,残業や休日出勤させないよう努力することを求めている。このような点を会社側に伝え,残業や休日出勤をなくすよう話し合うこと。
4 「期間の定めのない契約」を一方的に有期契約に変更されそうなとき
→これは労働条件の一方的変更の問題ではなく,労働契約自体に関わる問題。会社が労働者との契約を一方的に不利益変更することは許されない。安易に契約書に署名や押印をしないこと。契約書に署名すれば,変更を認めたことになり簡単には撤回できない。口頭でも同じこと。問題であると感じたら,いったん明確に拒否し,行政機関や労働組合等に相談すること。
・飯田物流事件大阪地裁判決(1997/10/16) 
期間の定めなく雇われた常勤パートが途中から期間を1年とする契約書作成
→有利な条件の提示もなく,仕事上のミスもないのに,地位を不安定にする契約に自ら変更するとは考えられない。契約書の期間制限は格別の意味を持たず期間の定めのない雇用契約上の地位を有する。
・駸々堂事件最高裁判決(1999/4/27) 
期間の定めのない契約だったアルバイトが会社合併に際して,期間を6ヶ月とし時間給も減額となる契約締結
→新契約の締結は,応じなければ従業員としての地位を失うとの誤信によるもの。要素の錯誤で無効
5 会社が労災保険に入ってくれないとき
→会社が加入手続きを怠っている場合には,一度会社と話し合い,それでも改善されない場合には,労働基準監督署に指導してもらうこと。また,労働災害が発生したときは,加入手続きがしていなくとも,労働基準監督署に申請すれば補償を受けられる。
6 会社が雇用保険に入ってくれないとき
 →パートタイマーの加入要件は,
[1] 1週間所定労働時間が20時間以上であること。
[2] 1年以上引き続き雇用されることが見込まれること。
[3] 年収が90万円以上あることが見込まれること。
 会社が加入手続きを怠っている場合は,一度会社と話し合い,それでも改善されない場合は,職業安定所に指導してもらうこと。
ご注意下さい。このホームページで紹介している情報は,あなたへの法的なアドバイスではありません。個別の状況に応じた,法的アドバイスを希望される方は,弁護士による法律相談をお受けになることをお勧めします。
(C)Copyright 枚方法律事務所 2001- All Right Reserved.

上に戻る